中島岳志をゲストに迎えた「日本人と戦後70年」[読書メモ]

青木理さんの「熱風」連載2022年3月号のゲストは東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授の中島岳志さん。

冒頭で、中島さんが自らの政治的立場を保守と位置づけていることに触れ、保守思想をイギリスの政治家で思想家のエドマンド・バークに源流があるとしています。

バークは、フランス革命が人間の叡智に基づく設計図どおりに進められたのであれば、その人間観には大きな誤りがあると考え、不完全性こそが人間の本質で、そうならば人間社会は不完全なまま推移せざるを得ない、と啓蒙思想を否定したとします。

そのときに必要となるのは経験値で、それを依拠しながらグラデュアル(漸進的)に変えていくのが良い(つまりフランス革命のような急進的なものではなく)と訴えたのだと解説。

これを踏まえて、保守とは、異なる他者の意見を尊重しつつ合意形成を目指す立場で、基本的に「リベラル=寛容」になる、としています。

保守とはリベラルのこと、だったんですね。

そして、保守と最も相容れないのが不寛容、20世紀ではファシズムと共産主義になるというわけです。

こうした感覚が狂ってきたのは冷戦終結後で、左の陣営が「革新」を捨てていく過程で保守勢力に対抗するためにリベラルを使い出したことが発端だった、と。

一方で、保守がパターン化(権威主義的、父権制的)に陥っていくことで、保守対リベラルという対立構造が成立してしまったというわけです。

結果的に日本の1980年代以降の保守は「『左』に対するルサンチマンというか、薄っぺらなアンチテーゼでしかなかった」と断ずる中島さんの言説に納得したところです。