「熱風」2021年6月号[読書メモ]

「熱風」2021年6月号[読書メモ]

こだわりのアナログ・レコード

この号の特集は「ジブリのLPができるまで」。

スタジオジブリの作品がLP化されたのにともなっての、解説という位置付け。

復刻というだけでなく、初のLP化も含めて全24枚という豪華なラインナップ。

これは少なからず30センチ四方のジャケットというコレクターズ・アイテムに資する特徴を反映した営業的判断が影響しているものと考えられる。

基本的に収集欲がわかないので、それぞれの背景を語るスタッフたちの話にはそれほど興味を示せなかったのだけれど、アナログ・レコードの作業について語られた一節はおもしろかった。

ジブリまでは、 「となりのトトロ」までがアナログのテープ・レコーディング。以降はデジタル・レコーディングになるも、マスターはアナログのままで、「千と千尋の神隠し」(2001年)からがデジタル・マスタリングという具合。

国谷裕子さんの貴重な“証言”

青木理さんの連載対談「日本人と戦後70年」のゲストは、23年間にわたってNHK「クローズアップ現代」のキャスターを務めた国谷裕子さん。

奇しくも2023年3月現在、永田町/霞が関周辺を騒がしている、安倍政権下における放送法の「政治的公平」改変の圧力を受けてキャスターを“降ろされた”と言われていた本人がら、オブラートに包みながらも当時の状況を語ってくれている。

それよりも興味深かったのは、インタビュアーとしてのテクニックを明かしてくれている部分。 

たとえば権力者にインタビューをするといっても、「時間はせいぜい20分程度で、それでも比較的長い方」という制限のある現場で、どうやって話を引き出すか。「そういうときって相手の答えにはあまり期待できないんです」というのは経験ならではの言葉。

ではどうすればいいのかと言えば、「何を問うているのか」を明確にした質問が、問題の本質、隠されている部分に迫る手がかりを与えてくれる、と。

「たとえ権力者の口から説明されるこ ことがほとんどなかったとしても、インタビューのやりとりを伝えることで、ああなるほど、こういうことがいま問題なのか、こうした説明をすることを権力者側は避けようとしているのか、などと視聴者が共有できる、伝えることが出来ると思っていました」。

インタビューの仕事をしていて感じるのは、“間合い”の大切さ。相手の挙動を誘発することでその気配を周囲にも伝えられるということ。その場面を言語化した回答だと思う。

さらに加えれば、どう見せるかという編集の手腕も劣らず重要で、彼女のキャリアのながで培った制作側の信頼の厚さと、それを打ち壊した局の仕打ちに思いが到り、無念さはいかばかりであったことかと拝察してしまう。

もちろん文面からはそんな弱気が滲むことはなく、ジャーナリストならではの凛々しさに溢れているが。