なぜ「鉄は宇宙の傑作」なのか?〜「熱風」2023年2月号「へそ曲がりメカ放談」第8回[読書メモ]

自動車評論家の福野礼一郎氏を相手に「熱風」誌編集長の額田久徳氏がズルズルとマニアックな話を引きずり出すインタヴューのまとめ記事が毎回おもしろい。

今回は日本刀あれこれ(鉄のはなし編)として、日本刀の材料である鉄についてどんどん話
が逸れていく(逸れていくのは毎回のこと)。

福野氏は自動車評論家として数多くの自動車関連企業の取材もしていて、新日本製鐵名古屋製鐵所の取材の際に担当者から「鉄は宇宙の傑作である」という言葉を聞く。

これに関する福野氏の理論武装が圧巻。

まず、 星の最期に核融合反応の終末期を迎えると、「炭素、ネオン、マグネシウムの順で燃焼していって、ついにはケイ素の燃焼までが起き、ニッケル56が生成されます。これはすぐにベータ崩壊して陽子26個の鉄56が誕生します。これ以上は質量をエネルギーに変換できないので、鉄の生成をもってアルファ反応は終わり、このあと生じる星の崩壊によって鉄は空間に飛び散ります」。

我々の太陽と太陽系は、45億6700万年前にスターバースト現象によってできたが、その際に「双極流による物質大循環が起き」て地球も誕生する。

ということで、地球を構成する物質の全質量の38%が鉄になった、と解説。

鉄より重い重元素は「中性子星同士の衝突など、非常に稀で特殊な状況でしか生成され」 ないため、逆に重元素としての鉄は宇宙のどこにでも存在しえることになり、文明は必ずこの鉄を利用せざるをえなくなる」としている。

これとは別に、43億年前に小惑星が地球に衝突。

これによって「プレートテクトニクスが生じ」て地球表面環境を大変化させ、内部ではマントル外核に鉄などが溶けた層が宇宙線を遮断したことで、生物が誕生できる条件が整う。

地表では光合成によって大量発生したシアノバクテリアが酸素を放出、これが海中に溶け込んでいたFe2二価鉄の酸化を促し、15億年くらいかけて鉄鉱を形成したとのこと。

文明をもつに至った生物=人類が武器(刀)を持つことを説明するための超俯瞰的理論展開を読んで、50億年という地球の時間軸が極めて合理的に推移してきたように思える論に脱幅です。