特集「目の見えない人が美術館を楽しむ」|「熱風」2021年12月[読書メモ]

「熱風」誌の巻頭特集は、国立新美術館館長の逢坂恵理子さん、水戸芸術館現代美術センター教育プログラムコーディネーターの森山純子さん、ノンフィクション作家の川内有緒さんによる鼎談。

川内さんが『目の見えない白鳥さんとアートを見に行く』を上梓して、その周辺的なエピソードを

“提供者”のひとつである美術館関係者を交えて語ろうという企画だ。

白鳥さんと川内さんが美術館を訪れる話は読んでいて、NHKのドキュメン

タリー番組などでも紹介されていた(はず)。

その当事者である白鳥建二さんを抜きにして、美術館の在りようを語り合うという企画がとてもおもしろかった。

森山「美術館という場所は..

森山さんが、逢坂さんの「わからないということを受け入れることって意外とできないんですよね」という発言を受けての言葉が印象深かった。以下。

「美術館には必ずしも心地よい体験ばかりが用意されているわけではないんですよね。(中略)美術館という場所は、アーティストがいろいろな価値観を提示してくれて、私たちはそれを考えるレッスンとして体験することができる」

附言

わからないこと=不快という風潮は、20世紀の前半から中盤にかけて希薄化したようにも見えたものの、ポピュラー音楽(すなわち”わかりやすさ”こそ善)が席巻することで再び強まっているように感じている。

社会問題など不快から探求が始まる分野も多い。

そして、多様性こそ“心地よい””わかりやすい”のみにならないことが求められる。

美術の多様性を学び、音楽や社会にその学びを広げていきたいと改めて思わせてくれた記事だった。