#かしましめし 1話 [4月14日のTVながら観]

「きのう何食べた?」や「今夜すきやきだよ」、「作りたい女と食べたいな」などなど、飯テロと呼ばれるジャンルを確立したTVドラマのなかで、ダブル主演的な”カップルの多様な
関係性を絡める作品が目立ってきた。

そして、その関係性が“カップル”からさらに広がりを見せている──というのが本作の第一印象だ。

主人公が3人、というところで、ウチのカミさんが「『29歳のクリスマス』みたいね」と言った。

「29歳のクリスマス」は1994年の放送。

山口智子さん、松下由樹さん、柳葉敏郎さんの3人が、仕事に恋にと、人生の節目のひとつである30歳を前にあらかうようすを、友情をオルタナティブな価値観として示しながら描いた、ポスト青春群像劇だった、と記憶している。

バブルに浮かれて希薄になった人間関係の再発見として、男女関係を帰結点としないノット・ペアな3人という登場人物を軸とした作品だと見ることができる。

一方の「かしましめし」は、失なわれた時代をデフォルトで過ごしてきた世代が、コロナ禍というさらなる試練を経て、大切なことは”自分を探すこと”ではなく自分の居場所を理解することだということに気付かせてくれる人間関係だったという裏テーマがあるのではなかろうかと感じた次第。

もちろん、劇中にそんな重苦しい雰囲気はあからさまには出てなくて、仕事の辛さや仕事がない辛さ、性的指向への世間の偏見などに対峙して悩む姿はあるものの、スッと肩の力を抜いてやり過ごそうとするしたたかさがある世代でもあることを(あるいはそうすることに慣らされてきた世代であることを)、コミカルに描いている。

ヤマ場を作りにくいテーマだが、飯テロにとどまらず、居心地の良い他人の意味を考え直すきっかけを与えてくれる展開を期待しながら、次回を待ちたい。