「熱風」2021年8月号[読後メモ]

青木理さんの連載「日本人と戦後70年」のゲストはジャーナリストの鮫島浩さん。

鮫島さんは朝日新聞の政治部記者から50歳を前に辞職。インターネットサイトのSAMEJIMA TIMES を開設している。

このインタビュー記事のなかで、新聞というメディアの衰退について触れた部分。

鮫島さんが引用したのは、朝日新聞役員からテレビ朝日社長を経てテレビ朝日ホールディングス社長になった吉田慎一氏から10年以上前にかけられた言葉。当時、吉田氏は朝日新聞の編集担当役員に就任したタイミングだったが、「新聞は近い将来、バケツの底が抜けたように読者が減る」と予見。

社員4,000人以上のうち2,000人以上も記者がいる状態を可能にしている

のは800万部の発行部数(当時)があるからで、「そのうち維持できなくなる」と言ったそうだ。

吉田氏によれば、部数減により記者は500人程度に減らさざるをえず、これまでの取材体制の維持は不可能だ、と。

そうした分析を踏まえて、今後の新聞の“売り”は「調査報道とオピニオンだ」と断言したと言う。

それを受けて鮫島氏は、朝日新聞で当局情報に頼らない特捜部で腕を振るい、年功序列も会議もない部署のなかで「ホームラン以外を狙わない」という姿勢で記事に取り組んでいく。

変革期を先取りする組織論としてとても興味深い事例だが、再現性はかなり低いと思わざるをえない。

結局、(予見はその回避を目的としたものでもなかっただろうが)、ニューメディアでジャーナリズムの在り方に転用せざるをえない部分ではあった。

そのうえで、ネットメディア時代の誰もがジャーナリストのいま、「調査報道とオピニオン」という指標は、さらに重要性を増していると感じているところです。