アフリカの失望を希望に変えたワインと人生のマリアージュ〜映画「チーム・ジンバブエのソムリエたち」

混乱と貧困にあえぐアフリカ・ジンバブエから生活のために南アフリカへ渡った4人。そこで初めてワイン”という飲み物があること、それが単なる嗜好品にとどまらず、深淵な精神文化を擁し、世界的視野と知識を以て対峙するに足るものであることを知り、彼らはチームを組んで世界ブラインドワインテイスティング選手権に出場することを決意する。そんな、上位に入れば“神の舌”として世界に認められるこの大会に、無謀にも初挑戦した顛末を追ったドキュメンタリータッチのドラマ。

ムガベ大統領の失政、越境する難民の受難、南アフリカにおけるジンバブエ難民の迫害など社会問題も盛り込むが、「それでもジンバブエにいるよりはマシ」と前を向くジンバブエを後にした人々を象徴するような生き方が、この映画のテーマになっていると言えるだろう。

また、4人が協力し合ってテイスティングの答えを模索するようすは、アフリカに伝わるUBUNTU=ウブントゥという教えに則したものとする指摘はなるほどと思わせた。ウブントゥとは「人と比べず、競わず、つながり、助け合えば、それでも自分らしく生きられる」という教えで、反アパルトへイトの活動に身を捧げノーベル平和賞を受賞したデズモンド・ツツ大主教の孫娘であるムンギ・エンゴマニの著書にもそのものズバリのものがあったりするようだ。

選手権が近付くにつれてトラブルも増え、まさにドラマ(フィクションか演出)ではないかと思えるような展開になるのだけれど、4人は国の代表としてのプライドを忘れずにそれらを乗り越え、当日を迎える。「僕らの(ジンバブエを後に死を覚悟して南アへ向かった)旅は脳と心に刻まれている」という言葉はとても重い。そして選手権本番、1年の彼らの姿をインサートしてエピローグを終えるが、彼らの2017年のこの体験はヴィンテージされ、さらに熟成して伝えられていくことになるのだろう。