映画「ジェラール・フィリップ 最後の冬」 #試写メモ

2022年はフランスの名優ジェラール・フィリップの
生誕100年にあたる年になります。

1922年生まれのジェラール・フィリップは、
戦後のフランス映画界を駆け抜けて、
最も愛された夭折のスターと呼ばれた存在。

キャリアの絶頂期だった1959年に
36歳で亡くなってしまいました。

生誕100年を迎えるに当たり、彼を再評価しようという
動きとともに、この映画の制作が進められ、
2020年に評伝が出版され、
第75回カンヌ映画祭で上演され喝采を浴びた
ドキュメンタリーが本作です。

時系列が前後して、彼の出演作と経歴が
頭に入っていないと筋を終えない可能性もあります。

そして、基本的に“夭折”という“悲劇”なので、
全体にカラッと観ることはできない内容です。

しかし、それでもなお、フランスで愛された
スターの足跡と、その陰に隠れた苦悩を
浮かび上がらせるドキュメンタリーに
なっていたと感じました。

このあと、ヌーベルバーグへと以降し
映画はフランスを軸に大きく変化していく
わけですが、彼の存在は十分に“布石”と
なっていたのではないでしょうか。

そのヌーベルバーグの先駆けとなる
ロジェ・ヴァディム監督作品「危険な関係」にも
ジェラール・フィリップは出演していますが、
この映画はジャズ・ファンも要注目なのです。

というのも、セロニアス・モンクと
ジャズ・メッセンジャーズといった面々が
フィーチャーされているからです。

当初はセロニアス・モンクにこの映画の
音楽を任せるつもりだったようなのですが、
モンクが不調だったこともあって、
デューク・ジョーダンやバルネ・ウィラン入りの
ジャズ・メッセンジャーズを加えて、
サウンドトラック的にはジャック・マーレイで
まとめられたということになっているみたいですね。

ジェラール・フィリップの作品を一気に
味わうことのできるこの機会に、
1960年代初頭のフランスとジャズの
交流にも想いを馳せながら映画を堪能してみる
というのはなかなか“文化の秋”なんじゃないでしょうかね。