南清貴『行ってはいけない外食』は「自分で作るより安い」という外食の魅力を打ち砕く“悪魔の書”かもしれない

 

『行ってはいけない外食』の読書感想備忘録です。

 

 

本書の概要

著者は、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事を務めるフードプロデューサー。

栄養学校で学び、1995年から2005年まで東京・代々木にレストランを開業するなど、現場の事情もよくする人物と言っていいでしょう。

本書は8章で構成され、最初の2章で外食も仕組みとメニューを手がかりとした見分け方などの解説に費やしています。

後半は、食品の種類や調理法などに分けて、その善し悪しのポイントを解説。

 

ピックアップ

以下は、食べ放題などによくあるリスクへの言及。

よくあるホテルのスイーツバイキングも行かないほうがいいです。パティシエが心を込めてきちんと作っているという、余程信頼できる情報があれば別ですが、二流、三流ホテルのスイーツは避けたほうが無難なのです。
(中略)
問題は、そのホイップクリームの質です。
多くは植物性のクリームが使われています。
まず、本物の乳製品であることはまれで、
つまり、トランス脂肪酸の塊です。
(中略)
もう一つホテルで気をつけてもらいたいのは、コーヒー、紅茶用の砂糖です。白糖もグラニュー糖もよくないのですが、最近は、本当にまともなホテルでも人工甘味料のスティックが置いてあったりします。客がノンカロリーを求めるからなのでしょうが、ノンカロリーの甘味料というのは、どんなに健康に注意していても、一回使っただけでアウト、というぐらい身体に悪い物です。

オーガニック農法への偏見にも触れられています。

オーガニック農業に切り替えると、収量が減るとか、虫がたくさんつくとか、非科学的なことを主張する人たちがいますけれど、これはまったくの偏見です。このこと
に関しては、カリフォルニア大学のヴァシリキオティス博士という方が、オーガニック農法は慣行農法に対してまったくひけを取らないものであり、それどころか作物によってはオーガニック農法のほうが収量が多いということを、八年という月日をかけて証明しました。

エビデンスがヴァシリキオティス博士の論文だけしか見つからず、心許ない主張なのですが、これまで生産にかかる手間と流通コストのバランスの悪さばかりが論われ、有機野菜=高い=非効率といった固定観念を覆しうる提起にはなると思います。

 

まとめ

本書は、食品問題の背景には「安く、美味しく」が求められる一方で、「安全も提供しろ」という消費者の我儘があり、それが同時に成立し得ないことで起きる「ねじれ」のなかに外食産業が位置していることへの警鐘を鳴らすものと言えます。

こうした裏話は情報として受け取るだけでなく、生命の安全を考えるきっかけにしたいものだということを考えさせられます。

そうでなければ、我が身を振り返って食べるべきものを食べていない現実に気付かされて、なにを食べても毒が入っているようなノイローゼ状態に陥ってしまうだけですから…。