電子書籍は書籍データと名を改めて新たなチャネルとしての活用を考えたほうがいいのではないだろうか
この記事は、2015年にアップして、消えてしまったものの再アップです。
電子書籍は確かに利便性に優れた媒体だと思う。
探す手間が大幅に短縮され、清算方法を含めて買いやすく、持ち運びや収納に優れているなどなど…。
しかし、デメリットと感じる点も少なくない。いや、少なくないなんてもんじゃなくて、多くて嫌になることもまれではない。
電子書籍のデメリット
デメリットを挙げてみよう。
1. どこで買うかが後々に影響する
電子書籍の購入方法は「ポチッとな」とシンプル。
ところが、買うサイトによってそのあとの対応が異なるので、どこでもいいからと安易に「ポチッとな」しないようにしたい。
というのは、A社のサイトで購入したものは、A社が提供するデジタル環境でしか「読むことが出来ない」のが原則だからだ。
購入サイトではそれぞれが可読性などに趣向を凝らしたリーダー・アプリを(原則として無償で)提供しているが、購入サイトが違うものを読み込むことは基本的に不可能になっている。
2. どこにしまったかがわかりにくい
アプリなとの可読性が高まるのは歓迎だか、前述のように購入サイトごとに閲覧ソフトを変えなければならないので、閲覧と保存を購入サイトによって分断されることになる。
購入と閲覧のあいだにブランクがなければあまり不都合はないが、「あとで読もう」というときに複数の購入元があると、「あれ? どこにあったっけな?」と探さなければならなくなる。
3. しまったことを忘れる
「あれ? どこにあったっけな?」という状態が高じると、買ったことを忘れるリスクが高まる。
紙の本なら積ん読という機能を持たせることが出来るが、デジタル環境ではこれが難しい。ということは重複購入のリスクも高くなるだろう。運良く同じ購入サイトで検索すれば購入履歴で気づくかもしれないが、違うサイトでの重複購入リスクを避けるのは難しそうだ。
4. 品揃えがまちまち
購入サイトの問題は購入できたときに限らない。そもそも購入サイトごとに欲しい書籍が買えたり買えなかったりする。これはせっかくの購入の利便性を台無しにしている。
5. 電子書籍化がおぼつかない
まだまだ電子書籍は紙の書籍の付随的な位置づけであることが多く、電子書籍化までの期間が長くとってあったり、電子書籍化される予定がない書籍も多い。
これでは比肩しうるメディアとは呼べないのではなかろうか。
紙書籍が復活の兆し?
こんな文句を書き連ねていると、紙書籍の出版量が盛り返してきたというニュースが入ってきた。
記事では、2015年にアメリカで売れた紙書籍の部数が5億7100万部で、前年の5億5900万部から2%アップしたと伝えている。これは売上額が落ち込んでいないことからも安売りの一時的な効果ではなく、純増であるとし、書籍の電子化の潮目が変わってきた前兆として論を進めている。
紙書籍が復活する原因は主に、「電子書籍化の価格上昇によって相対的に紙書籍が見直されるようになった」ことが挙げられている。
この背景には、アップルを巻き込んでの出版社と“電子書籍マーケットの巨人”であるアマゾンとの対立が関係しているようだ。
また、紙書籍のマーケットを具体的に牽引しているのは「大人のぬり絵」とのこと。確かにぬり絵は“紙”である優位性を最も活かすことができるコンテンツだろう。
ただ、活字文化復権の牽引役が“ぬり絵”というのはチト引っかかるが…。
一方で、電子書籍を利用していない人に比べ、電子書籍を利用している人が紙書籍を読む割合は2倍ほど高い調査結果もあるなど、実は“電子vs.紙”ではなく“書籍を読むきっかけ”に問題の軸があることも指摘している。
読みたい人が読みたいときに読むことができるーー“グーテンベルク以来の技術革新”が実現したメディアと思われたが、まだまだ電子書籍は“未完の大器”にとどまったままだと言わざるをえない。
なんとか駆逐するのではなく共存しながら、さらに読書の利便性を高めてもらえるように願いたい。