日本の電子書籍市場はまだまだとば口の手間にたどり着いたところだと言わざるを得ない
この記事は、2014年11月にアップして、消えてしまったものの再アップです。
電子書籍の可能性と課題と題して、佐々木俊尚氏がラジオで語った内容を文章化したブログ。
■photo by Mike Licht, NotionsCapital.com
「電子書籍の可能性と課題」について佐々木俊尚が語るー書物の過去・現在・未来(1)ー〔全5回〕
引用元
NHKラジオ第1「私も一言!夕方ニュース」(2014/10/21)
聴き手:百瀬好道(NHK解説委員)
電子書籍元年と言われた2010年から4年、日本の状況について……
佐々木氏は「やっぱり本は紙だろう」と言われていた当時よりは、かなり電子書籍が定着してはきているとの認識。
これには、紙の本の売り上げがだいぶ落ちて、電子書籍への期待値が上がっていることが背景になるとの見方を示している。
ただ、現状としてはダウンロード数が紙の出版数の10分の1に満たないので、4分の1に達しているアメリカに比べてもかなり普及していないことがわかる。
内容に関しても、ビジネス書とマンガの電子化普及が進んでいて、それ以外には波及していないことに触れている。
電子化には資金が必要になり、それが小出版にとって負担になっていることを原因に挙げている。
佐々木氏は、「サブスクリプション」方式、すなわち月額定額配信が個別購入を駆逐する状況であることを示唆。これはすでに音楽マーケットで形勢が逆転していて、この波が書籍にも訪れるだろうと予測している。
書き手の問題として、サービスが整いつつあり、アップロードするだけで1冊の本が出版できてしまうという状況があることをふまえながら、印税率にも言及。紙の本の印税に比べて「5〜6倍、へたすると10倍ぐらい」というインセンティヴがあることも、今後の電子化の流れに追い風になっているとしている。
ただ、日本ではなかなか電子書籍に作家が流れていかないことも事実であるとして、理由のひとつはITリテラシーが低いこと、まだ電子書籍の売り上げが多くないので実質的な収入が現実的ではないことを挙げている。
また、ストアやリーダーの使い勝手の悪さもマーケットの広がりを阻害していると指摘。それがGoogleやAmazonの寡占化の原因にもなっている、と。
日本のメーカーって使い勝手とかソフトみたいなものをきちんと作るっていうことが若干足りないかな、と。モノ作りなんですよね。綺麗な工芸品とかを作るのは得意なんですけど、デザインとか目に見えないモノにはなかなかお金をかけない、昔からよく言われていますよね、そういうところが電子書籍の世界にも影響しちゃっているんじゃないかなと思いますね。
メーカーは流通を知らないし、流通はソフト作りに無頓着だったりと、構造的な連携のなさが電子書籍マーケットの全体に蔓延しているのは4年前と変わっていないような気がする。
このあとは、電子書籍についての今後の可能性についての“妄想”なので割愛。
電子書籍に関してのオーソリティと言っていい佐々木俊尚氏にしてこれだけ問題点を指摘される電子書籍業界というのは、まだまだ機能していないと言わざるを得ない。おそらくプラットフォームの問題など実質的に電子書籍をどこから出版すればいいのかという、紙にしてみれば「持ち込む出版社をどう選ぶか」というまったく初歩的な問題さえクリアしていないところまで言及したかったところなのだろうから、まだまだ夜明けまでは程遠いと言わざるを得ないかもしれない。