離島への移住という夢と現実のギャップを浮き彫りにした『僕たちは島で、未来を見ることにした』(reading memo)

島根県の沖合いに浮かぶ島・海士町(あまちょう)に移住して起業した2人の青年の背景や経緯を綴りながら、離島の問題、移住の課題、日本の地方の未来を考える問題提起が詰まった、読み応えのある一冊だった。

人口の流出と財政破綻の危機の中、独自の行財政改革と産業創出によって、今や日本で最も注目される島の一つとなる。

というのが海士町。

著者の2人は、20代後半に差し掛かったある日、都会での生活をこのまま続けていいものかという、ある意味では人生の根元的な、ある意味では「なにをいまさら小学生みたいなことを」的な、さらに言えば日々の生活に疲れた都会人が口にしたがるような“常套句”に囚われてしまう。

たいていは、飲みに行ったり、公園を散歩したり、水族館で半日ほどボーッとしていたりするとおさまる類いの“気の病”で済むのだが、彼らはそれでは済まなかった。

意外な動機と思われるかもしれません。都会生活に疲れてのんびり田舎暮らしに憧れるわけでもなく、僕たちは、未来に可能性を投げかけられる自分でいたいがために、島に移住したのです。

出身地に帰るのであるならまだしも、会社を辞めて安定収入の当てのない、しかも知り合いもいない場所に移住というのは、いくらそこを理想郷だと思ったとしても、憧れだけでは行動に移せないのが道理だろう。

そして僕たちにとっての精神的支柱であり、海士の顔でもある海士町の山内町長がいつもまちづくりで大切にしているのは、「よそ者、若者、ばか者」です。

こうした受け入れ側のマインドがなければ、リスクのある移住を真剣に考えてみようという風潮は起こらないだろう。こうした体験的な感想はとても貴重だ。

というのも、よそ者をよそ者をとして受け入れなければ、相手にその地域のシキタリを押し付けることになり、そのプレッシャーは往々にして排除というかたちで同化を妨げる。

移住の主流はリタイア組だが、これは年金や退職金などのおかげで地元経済サイクルに頼らなくてもいいことを示しているので、受け入れ側としては活性化に貢献してもらえない層となってしまう。やはりその土地で経済活動を継続させていく若い層を呼び込むことが重要だと考えることは絶対条件になるだろう。

3つめの「ばか者」は含蓄の深い言葉だ。本書はこの「求められるばか者」になるための指南書であると言い換えることができるかもしれない。

「補助金があるから」事業をする」のではなく、補助金で大きなことを試し、その後も自分たちの継続できる形できちんと残していくわけです。

UターンやIターンなどには補助金が交付されることも多い。農業研修や漁業研修など、転業のために必要な短期の修行を用意してくれるのは実戦的と言えるが、就労支援という名のもとにばら撒かれる予算のなかには首を傾げるものも多く、そうした無駄遣いがいずれは自分たちの首を絞めることになることへの警鐘だ。

ボクも町内会青年部などというところに籍を置いて、行政から3年間の期限で補助金をもらって盆踊り大会を企画したことがあるのだけれど、町会はもちろん、地域活性化にはまったくかすりもせずに、ただただ自分たちが遊ぶために使い果たしてしまったという経験があり、その難しさを少しは実感できたりするのだ。

東京が「今」の物質的文明に特化しているのに対して、地域は「過去」の精神的文化に特化しています。過去の様々な祭礼や風習が残されているのは地域です。海士のように50年前の価値観が今も息づいている場所で未来を考えるとき、必ず過去のことを思い出しながら考えることができます。先人の失敗と成功、そして地域の文化を思い出しながら未来を考える思考になるのです。

ボクは上記の言葉に、「よそ者」と「地元民」を繋ぐヒントが隠れているのではないかと感じた。

都会の価値観を上から目線で押し付けられるのを地方の人は生理的に嫌う。そこには「よそ者」が「知識がある」という前提で関係を築こうとする“差別感”が存在するからだろう。

ところが、「地元」の知識が通用しなくなっているから、過疎や経済的な弊害が発生しているわけだから、新たなアイデアが必要であることは間違いないのだ。つまり、「よそ者」が順応してしまうと、過疎の町にお荷物が増えるだけという悲惨な状況に陥ってしまう。なにも変わらない。いや、悪くなるばかりだ。

本書を読むと、海士町という場所は若者にとって移住をするのに理想的な環境が整っているように読み違えてしまうかもしれない。「行けばなんとかしてくれる」という考えが通用しないのはもちろんだが、「誰でもいいから来てくれればなんとかする」というわけでもない。

どこにでも厳しい現実は存在する。しかし、見捨てられた現実よりも、見てみたい現実を作るほうが、言うまでもなく創造的だ。

本書を通して地方に暮らす夢と現実を垣間見ることは、見てみたい現実とはどういうものかの一例として機能してくれる。

だから、海士町に行ってみたくなる。

 

 

投稿者: gwt

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